@ゲー単走部

ローグライク雑記。変愚蛮怒、DCSSなど。

変愚蛮怒 "竜窟スカム"の多義性と効率性について

今回も Roguelike Advent Calendar 2014 - Adventar

の記事です。 内容は変愚蛮怒の竜窟スカムに関する考察です。

 

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1. Roguelikeとしての*bandの特異性
 今年のアドベントカレンダーの記事にもあったが、Roguelikeにおいて、一般に物資や経験値は無限にあるものではない。元祖Roguenethackから続くRoguelikeの伝統は、基本的には、階層が保存されるダンジョンを潜り(Rogueはイェンダーの魔除けを手に入れるまで階段は上れないが)、有限の敵を倒し、有限の物資と経験値を獲得し、脱出するといったものだ。
 コンシューマーの不思議のダンジョンシリーズ(シレンなど)も、この方向のゲームだと考えてよいだろう。ストーリーモードのダンジョンを除けば、持ち込み不可ダンジョンを潜ることを楽しむ(いわゆる「素潜り」)ゲームのはずだ。


 ところが、こと*bandにおいては全くそうではない。
 普通のRPGと同様、物資も経験値も無限にある。ありあわせのものでなんとかするというよりも、万全の準備を整えるプレイが要求されている。ほとんど普通のRPGと同じで、違うのは、死んだら最初からやり直しという一点のみ。
 同じRoguelikeでも、*bandは元祖Rogue,nethack不思議のダンジョンシリーズと方向性が全く異なることがわかる。
 このあたりの考察は、以下のブログ記事に詳しい。
 http://d.hatena.ne.jp/inziladun/20070421/1177167794

2. Roguelikeにおける"スカム行為"とは?
 "スカム行為"は多分に"汚い行為"という意味だと思う。「ゲームの本質から外れるような汚い行為」をスカムと定義して、話を進めたい。では具体的にどういった行為がスカムに該当するのか。

 *band以外のRoguelikeで考えてみる。こちらは基本的に、物資・経験値が有限であることをゲームの前提としている。物資・経験値を安全地帯で無限に稼ぐプレイはおよそ推奨されるプレイではない(だからこそ食料システムという、常にプレイヤーに前進を強いるシステムが採用されている)。こういった行為をスカムと呼ぶのは自然に思える。

 一方*bandは、物資・経験値が無限にあることをゲームの前提としており、無限に行える稼ぎこそプレイの本質であるといっていい。安全地帯で物資・経験値を稼ぎ、万全の準備を整えた上でより深い階層へと進むプレイが推奨されているので、単なる稼ぎプレイをスカムとみなしてしまうと、あらゆる行為がスカムと呼ばれることになる。

 ではどういった行為が、*bandではスカムとして扱われるのか。直感的には、「適正階層以外で行われるあまりにも不自然な稼ぎプレイ」をスカムとみなすのが妥当だろう。ただし、その不自然な稼ぎプレイが効率的な稼ぎ方であるかどうかは問わない(なイ観TAを生み出した塔ブラックウーズ狩りのような、あまりにも効率的すぎるスカムは、最新の変愚ではBMスカムを除いてなくなっているので、効率性を定義にするのはよくない)。

 先ほど*bandは普通のRPGに似ていると書いたので、普通のRPGで何がスカムに該当するのか書いてみる。
 DQを例にとると、経験値が美味しいメタル系モンスターが出現しやすいダンジョンに籠もり、毒針を装備してメタル狩りを行うプレイが典型例として挙げられる。そして、この"メタル狩り"が効率的なゲームの進め方であるかどうかは、はっきりとはわからない。
 RTAのチャートを見ても、メタル狩りを前提とするチャート(道中の雑魚敵に対しては最低限の対処で逃げる)とメタル狩りを前提としないチャート(道中の雑魚敵を積極的に狩っていく)がどちらも存在することがある。もっとも、意図的なメタル狩りがあまり必要なかった作品でも、最近はメタル狩りを前提とするチャートに置き換わりつつあるのだが(SFCDQ5が典型)。

 DQでいうメタル狩りは、*bandでは何なのかといえば、それはもう皆さん大好きな竜窟スカムに決まっている。以降は竜窟スカムについて考察する。

3. 竜窟スカムの多義性
 長々と書いてきたが、この投稿で一番主張したいのはこれ。
 「適正階層より深い階層で行われるスカムと、適正階層で行われる単なる稼ぎと、適正階層より浅い階層で行われるスカムは区別して話すべき」

 もっと具体的に言うとこうなる。

 「鉄獄30Fを彷徨くのが精一杯のキャラが竜窟60Fでドラゴンを狩るプレイ、
  鉄獄30Fを彷徨くのが精一杯のキャラが竜窟60Fで毒針片手にワイアームを狩るプレイ、
  鉄獄60Fを彷徨けるキャラが竜窟60Fでドラゴン・ワイアームを狩るプレイ、
  鉄獄98Fを余裕で彷徨けるキャラが竜窟60Fあるいは72Fでドラゴン・ワイアームを狩るプレイは、
  全て区別して話さないと議論が混乱するので、"竜窟スカム"という曖昧な用語の使用は極力避けるべき」

  通常のRoguelikeにおいて、スカム行為とは、安全地帯で無限に物資・経験値を稼ぐことだということは先に述べた。
 だが、こと変愚においては、どう考えても安全ではない、むしろいつ死んでもおかしくない不相応な場所における稼ぎプレイすらスカムと称されることがある。  
 安全地帯での不自然な稼ぎプレイも、危険地帯での不自然な稼ぎプレイも、どちらも「スカム」として扱われる点が非常に紛らわしい。
  そして竜窟こそ、まさにキャラのレベルによって安全にも危険にもなるダンジョンなのである。

4. 竜窟スカムの効率性について(筆者の独断と偏見に基づく)
 ここからは竜窟スカムが本当に効率的なのかどうかについて考察していきたい。リスク・リターンという物差しで効率性を図ってみる。

(1) 適正階層が鉄獄30Fのキャラが竜窟入り口でドラゴンを狩るプレイ
 これはハイリスク・ローリターンの部類に入り、明らかに効率がよくないと思われる。
 30F程度のキャラが60Fをうろつくのはたとえ階段があってもかなり危険な行為なのに、得られるものがただのドラゴンなのだから、危険に対してリターンが見合っていないというべきだ。
 もちろん、ドラゴンを狩れるのは美味しいので、たかがドラゴンと言うのはおかしいかもしれないが、危険状態をリセットする階段昇降に必要な時間まで考慮すれば、時間あたりに得られる経験値は大したことがない。
 安全性の面まで考えれば、普通に鉄獄3,40Fを潜って、目があったドラゴンをしばいていく方がよいだろう。

(2) 適正階層が鉄獄30Fのキャラが竜窟入り口で毒針片手にワイアームを狩るプレイ
 これは(1)と違い、ハイリスク・ハイリターンの部類に入り、竜窟スカムの中で最も効率性が高いと考えられるものだ。ただし、プレイヤー側にかなりの熟練を要し、慣れないプレイヤーが行えば、たとえ*勝利*者であっても一瞬で死に至ることだろう。
 30F程度のキャラが60Fをうろつくだけでも危険なのだが、さらに毒針という確率依存の武器でワイアームを相手にしなければならない点がかなり難しい。
 だが、逆に言えば、このくらい格上の敵を狩るのでない限り、30F程度のキャラが竜窟に出入りする意味は皆無だということだ。たまに(1)を初心者に推奨する人が見かけられるが、やめた方がいいと思う。かといって、(2)を初心者に推奨できるかというと……。

(3) 適正階層が鉄獄60Fのキャラが竜窟入り口でドラゴン・ワイアームを狩るプレイ
 これはローリスク・ノーマルリターンといったところか。つまり、ノーマルリスク・ノーマルリターンより効率はよい。
 適正階層での稼ぎなのだが、竜窟の方が鉄獄より敵密度が薄く安全なのと、階段で状況をすぐにリセットできる点を考えて、ノーマルリスクではなくローリスクとしている。
 ただ、これをスカムとみなせるかどうかは正直怪しい。適正階層での稼ぎをちょっと安全にしているだけに過ぎないからだ。

(4) 適正階層が鉄獄98Fのキャラが竜窟でドラゴン・ワイアームを狩るプレイ
 最後のこれはローリスク・ローリターン。
 適正階層より浅い階層での稼ぎなのだが、98Fまで来ると危険度もピカイチ(感知、*破壊*を徹底するなら、竜窟72Fも鉄獄98Fも危険度は大差ないのだが……)なので、少し階層を下げて竜窟72Fを探索するのも意外と悪くはない。少なくとも経験値は安全に稼げる。
 ただ問題なのは、床に落ちているアイテムの質は鉄獄深層の方が圧倒的に上だという点。終盤まで来ると、むしろ啓蒙スカムで床落ちのアイテムを積極的に回収していきたいので、経験値稼ぎ以外の側面まで考慮すれば、決して効率はよろしくない。


 以上の考察をまとめると、竜窟スカムの効率性は意外とよくないという真実が浮かび上がってくる。
 もちろん低レベル帯からの毒針ワイアームスカムは嵌ればすごく効率がよいのは間違いないが、プレイヤーに相当の熟練を要求するので、凡プレイヤーから見るとあまり効率はよくない。
 凡人にもできる竜窟スカムは(3)、(4)くらいなものだが、適正階層で戦っている(3)は到底スカムとは言えない疑惑があるし、(4)の効率が実はよくないことも上で述べた通り。 
 結局のところ、この変愚蛮怒というゲームは、適正階層で安全に戦い、安全にアイテムを回収していくスタイルが、安定感が高く効率もよい、という、到って平凡な結論に到達する。そう考えると、いわゆる"鉄獄縛り"という縛りは、縛りどころかむしろ理に適っているプレイスタイルであることがわかる。

 竜窟に篭りきりの皆様も、たまには鉄獄縛りなど如何でしょうか。もっとも、自分も変愚本家では鉄獄縛りでは勝っていないのだけれど。
 
5. 勝手版の竜窟スカムについて
 最近は勝手版をプレイしていることが多いのだが、勝手版では竜窟と町との往復にかかる時間が、変愚本家のそれより多いので、どんな形であれ竜窟を利用する気がしなくなった。前回の*勝利*記録では一切使用していない。
 というか、本家よりもエゴやアーティファクトが豊富で、かつツモ補正も何となく上がっている気がするので、クローン前に必死にワイアームを突っついて装備を整える必要性は薄くなったように思える。
 あと、ストームブリンガーの入手難易度が上がった点も、私を竜窟から遠ざけている非常に大きな要因だ。