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DCSS 暗殺ビルドを例に改めて"デュアル"の存在意義を考えてみる-(2)

 前回の記事の続き。タイトルと真逆で、デュアルの存在意義の考察というより暗殺ビルドの存在意義の考察になってしまっている気がしないでもないが、あまり深いことは気にしないでおこう。

 

1. 前回の記事のまとめ:目的としてではなく、手段としての暗殺

 前回は暗殺の強さと暗殺ビルドの弱点を解説した。強さとは、暗殺が決まれば、群れがいようと強敵がいようと問答無用で封殺できる点。弱点は、暗殺特化の構築をした場合、暗殺できない状況(必ず起こる)に対する解決策が存在しなくなってしまう点である。

 この弱点を解消するため、暗殺ビルドは暗殺特化の構築をせずに(speedrunなら運ゲー上等でそういう構築をするだろうが)、暗殺以外の手札を持つ構築をすることになる。そういった構築の結果として、「暗殺以外の確実な手段が必要となるのであれば、暗殺は無意味なのではないか?」という疑問が生じるのは必然といえる。

 

 だが、この疑問は、「暗殺ありき」で思考した結果生じる疑問に過ぎない。

 暗殺は、目的ではなく、手段である。

 

 純戦士や純術師のような専門に特化した手段しかもたないビルドに対し、専門には特化しない代わりに幅広い手札をもつビルドを、"デュアル"と呼称することにするが、

デュアルがもつ手札の一つとして暗殺をとらえる。

 

 すなわち、暗殺を目的としてみるのではなく、手段としてとらえる。この思考転換により、先の疑問に答えるのはいとも簡単になる。これが答えだ。

 「効く敵を封殺できるのが暗殺なんだから弱いわけがない。効かない敵や効きにくい敵相手にコソコソ暗殺しようとして苦労するのが悪いだけだ」

 「デュアルの思想を前提に置けば、暗殺を手札にもつことは決して無意味ではない。問題は、そういうスキル構築が合理解たりうるかどうか、という点にある」

 

2. 暗殺ビルドの定義

 前回の記事では暗殺ビルドに定義を与えなかった。以降の記事で様々な暗殺ビルドを解説・考察することになるので、そのビルドに共通する思想として暗殺ビルドを定義しておこう。

 以降の記事では、「暗殺を手札の一つとして所持することが、最適解とまでは言わなくとも合理解として納得できるビルド」を解説する。

 極力暗殺にこだわるビルドについては解説しない。そういうビルドでは脱出したことがないので、解説できない。

 

3. 暗殺ビルドの典型的なスキル構築例

 このゲームはスキル制のゲームなので、具体的にどうスキルを構築するのかが重要だ。前回の記事ではSpriggan Enchanterという極めて一般的なビルドを例に暗殺ビルドを解説したので、ここでもSpriggan Enchanterのスキル構築を例に解説してみる。SpEnの暗殺に該当するスキルは大雑把に言って以下の通りだ。

 ---短剣スキル、隠密スキル、Hexスキル

 暗殺ビルドでは、隠密を上げて極力敵に気づかれないように探索するのが前提であり、隠密を上げるのは当然のことだ。短剣で攻撃するのだから短剣スキルを上げるのも当然のこと。また、この2スキルはスタブ発生率やスタブ倍率にも関わるので、暗殺ビルドを名乗る必要条件としてはこの2スキルが挙げられる。

 次にHexスキルだが、Hex領域には敵を状態異常にしたり自分を透明状態にする魔法が存在するので、魔法を使って暗殺するSpEnでは非常に重要なスキルである。

 だが、敵を状態異常にする魔法はHex領域以外にも存在するし、透明化は装備の発動でも行えるので、あらゆる暗殺ビルドでHexが重要な領域であるとは到底言えない。さらに言えば、暗殺をする上で必ずしも魔法は必要ではない。魔法を使わないTrog信者でも暗殺はできる(今回解説するのはTrog暗殺)。

 さらに注意事項。暗殺ビルドの必要条件として短剣、隠密の両スキルが挙げられ、SpEnの魔法暗殺ビルドの必要条件としてこの2スキルに加えHexが挙げられることを上で述べたが、この条件はあくまで「必要条件」であって「十分条件」ではない。プレイヤー側に「暗殺を手札にもちたい」という意識がなければ、そのSprigganは「暗殺を手札にもっているがまともにその手札を切らない」ビルドである。上で説明した暗殺ビルドの定義に基づけばこのSprigganも暗殺ビルドに該当するのだが、正直これを暗殺ビルドと呼称するのは違和感がある。暗殺ビルドの定義を少し見直すべきなのかもしれない。

 ちなみに、まともに暗殺しないSpEnは、スキルは一見「暗殺をサブウェポンにもつ妖術師」のように見えるのだが、実際は「隠密スキルによって快適な探索を送りつつ、短剣スキル/呪術スキルをサブウェポンにもつ妖術師」といったところである。このプレイスタイルについてはそのうち解説したい。

 

4. 脳筋Trog暗殺について

 今回解説する暗殺ビルドは、「脳筋暗殺」とよばれるジャンルだ。「暗殺というサブウェポンを得た脳筋」といったところで、Kobold Berserkerあたりが典型例となる。

 暗殺ビルドの中で最も方向性がわかりやすいのが脳筋Trog暗殺であり、これから暗殺ビルドを初めてやってみたいという人には強くTrog暗殺ビルドを推奨したい。

 方向性は極めて単純である。隠密にスキルを振り、隠密を機能させるために鎧のランクを通常の重戦士より多少落とす。起きている敵がいればそのまま殴り、寝ている敵がいれば華麗にスタブを決めていくスタイルである。

 この程度であれば通常の重戦士Trog信仰をやればいいんじゃないの、と思うかもしれないが、透明化を発動できる装備が手に入ると事情があっさり変わる。透明化は効く敵にはただただ強い。霊視抜けの人権を否定するのが透明化であり、うっかり坑道で出会ったSaint Rokaすら封殺できる程の力がある。

 また、ダンジョンにたまに落ちている網(throwing net)というアイテムも暗殺ビルドでは重要だ。網にかかった敵はスタブの標的となるのだが、そのダメージ倍率は睡眠/麻痺スタブに次ぐ高レートである。霊視もちの強ユニークだろうが太古のリッチだろうが、網さえあれば楽勝だ。通常の重戦士には味わえない特権を、多少の装甲の脆さと引き換えに堪能できるのがTrog暗殺ビルドというわけだ。Trog暗殺はシンプルでわかりやすく、暗殺ビルド初心者に最もオススメのビルドといえる。

 

5. 脳筋Trog暗殺の種族選択

 上でも書いたが、Kobold Berserkerが典型例。短剣スタートは火力が貧弱で真正面からの殴り合いはなかなか大変なのだが、Koboldはデフォで悪食がついているためTrogの祈祷Berserkが使いやすい。そのため短剣の貧相な殴り火力を補いやすいというわけだ。

 だが、個人的にはKoBeよりHalfling Berserkerをオススメする。

 Halflingは悪食がついているわけではないので、Koboldほど気楽にBerserkできるわけではなく、低層性能はKoboldの方が高いのは確かだ。

 だが、序盤を過ぎればなかなか気楽にBerserkを使えなくなり、短剣一本の進行が辛くなって来る。ところがHalflingは長剣にゼロベースの適性を持つため、基本は長剣戦士として振る舞い、短剣を暗殺用のサブウェポンとして運用していくスタイルが可能となる。非常に安定感が高いのでオススメだ(ちなみに、Koboldの場合、短剣以外で不得手でない武器は鞭だが、まともに使える鞭が手に入るのは終盤になる)。

 また、KoboldとHalflingでは防御適正が大分違う。特にHPが全然違う。最終的にはKoBeよりもHaBeの方が安定すると思われる。